インドのデリーで2週間ニートしてた話②

前回までのあらすじ

タイで言われた一言が僕をインドの旅へ誘った。

格安航空会社の飛行機で、深夜にインドに着いた僕は、朝まで仮眠をとり、早朝から空港の地下鉄を使って、ニューデリー駅まで出ようとするも、途中で話しかけられたインド人タクシー運転手の車に乗ることに。

運転手の車は、なかなかニューデリー駅に着かず、道を聞こうとしたところ、通行人の男から暴行を受ける。

運転手は、僕を安全なところを避難させるべく、彼の事務所まで車を走らせ、僕を事務所の中に案内した。

奥の部屋に入ると、デスクに1人のインド人男が座っていた。

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補足

※注 ちなみにこの旅の写真は1枚も残っていない。iCloudに保存してあったが、兄にそのデータを誤って消されてしまったためである。

ボスらしき男と流暢な日本語—テンションリダクション—

デスクに座っている男は、モニターを見ながら、パソコンで仕事をしているような感じだった。

僕は、運転手に案内されるがまま、デスクの目の前の席に座るよう促された。

彼は、ヒンドゥー語で、デスクの男に何か伝えると、デスクの男は、運転手に対して何か言い返して、運転手は返事をした。

言語とは、不思議なもので、何も分からなくても、雰囲気で何を言っているのか理解できてしまうことがある。

大阪のおばちゃんは日本語しか喋ってないのに、外国人とコミュニケーションが取れてしまう、という話も聞いたことがあるはずだ。

僕もその時に、「おお、これがそれか。」というような感覚に陥った。

短い会話だったし、ヒンドゥー語なので、何を言っているか全く分からなかったが、なんとなくデスクの男は上司で、運転手は、部下であることが分かった。

着ている服も、デスクの男はパリっとしたシャツを着ているのに対して、運転手はフリースのようなものを着ていたし、口調の強さも違った。

もしかしたら、この事務所でこの男は1番偉いポジションなのかもしれない。

そんなことを思いながら、座って彼らの短い会話のラリーを聞いた後、運転手が僕に向かって、

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運転手

やあ兄弟。ここならもう安心だぞ。

ちなみにここは俺の知り合いの旅行代理店だ。

(デスクの男を指しながら)この人は、とても親切な人だ。

旅行業界に何年もいて、詳しいから、デリーのことを色々話してくれるよ。

これから旅に出るならたくさん聞いてみるといい。

それじゃ、俺は仕事に戻る。それじゃあな。

と言って、部屋を出ていってしまった。

僕は、突然全く知らないインド人と2人きりになった。

なんだこのシチュエーションは。と思いながら、先ほどの恐怖冷めやらぬまま、今の状況も結構ヤバい気がした。

密室に知らないインド人と2人きりなのだ。

デスクの男は、2~3分くらいパソコンをカタカタしながら、デスクトップを見ていたが、動きを止めると、僕に英語で話しかけてきた。

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デスクの男

(カタカタ音)・・・それで、、話はだいたい聞いたよ。危なかったね。

インドを旅するなら、絶対に明るくならないうちは外に出ないことが大事なんだ。

君の国みたいにセーフティな国ではないからね。

にしても、怪我はないかい?

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ゆーが

うん。大丈夫。でも、だいぶ怖かったよ。

ノープロブレム。バットアイワズソーアフレイド。的なことを喋った気がする。言わなきゃよかった。

僕の雰囲気から怖がってる感じが相手に伝わってしまったような感じがあった。

デスクの男は、さっきのタクシーの運転手とは違い、口調は穏やかで、ロジカルに会話をしてくる感じがあった。

おそらく、ある程度しっかり教育を受けたような、インテリ臭がした。

そこからは、彼の質問に答える形で会話を進めていった。

最初の運転手とした時と同じように、何歳なの?日本のどこからきた?学生?下宿してるの?とかそういったことを聞いてきた。

彼と話している間も、もちろん警戒心は高まっていたが、話しているうちに、彼の話し方のせいかもしれないが、なんだかすごく落ち着いてきた。

さっきまでの恐怖心の高ぶりは、だんだん収まってきて、なんだか少し安心した。

身の上話がだいたい終わった頃、彼が僕の旅の話題に話を振ってきた。

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デスクの男

ところで、インドのどの辺旅するとか決まってるの?

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ゆーが

ううん。まだ何も決めてないよ。

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デスクの男

まぁそうだよね。みんなそう言うよ。

でも、旅をする上で、しっかりプランニングしておかないと、電車が取りにくいよ。

今(当時2~3月)は、インドのハイシーズンで、電車とか宿とか意外と取りにくいんだ。

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ゆーが

ふーん。

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デスクの男

それに、デリーは今、デモが起こってて、

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ゆーが

え?もう一回言って。

この時僕は、“Demonstration”という単語を「デモ」と訳すことが出来なかった。

すると、次の瞬間驚くべきことが起こったのだ。

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デスクの男

いや、だからデモンストレーション。デモのことだよ。(日本語)

!!!!

今まで英語で話していた目の前のインド人が、いきなりめちゃくちゃ流暢な日本語で話かけてきた。

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ゆーが

え?マジ?!

なんで日本語話せるの?

てか、なんで黙ってたの?

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デスクの男

いや、ちょっと君を試してみたんだよ。

まあ、英語力テストみたいなもんだ笑

日本人の英語レベルからすると、合格点だね。君。

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ゆーが

うわマジかよー!!喋れるなら言ってよー!

こんな異国の地で、日本語ペラペラな人がいることに僕は驚嘆した。

それと同時に、なんだか僕は彼に対して、より一層の安心感を抱いてしまっていた。

恐怖からの解放からくる安心感というか、なんだかこの人日本語話せるなら信頼できるな。みたいな感覚になった。

後から調べたが、これは、一度相手を緊張させてから、一気に緩和させて、相手は要求を呑みやすくする心理学の手法で、「テンションリダクション」と呼ばれるものらしい。

この数ヶ月後にベンチャーで営業のインターンをしていた時、心理学の勉強をして、本を読んだ時にこの手法を知った。死ぬほど悔しかった。

迫られる決断

すっかり安心した僕たちは、日本語で少し会話したあと、再び旅の話題に戻った。

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デスクの男

それで、話を戻すけど、今デリーでは、デモが行われていて、あまり治安が良くないんだ。

多分、タージマハルがあるアグラっていう都市と、ジャイプールって都市を回ってから、デリーに戻ってくるのがいいよ。

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ゆーが

ほえー。うーん。

でも、一旦ニューデリーの安宿泊まってから考えたいんだけど。。

(地球の歩き方を見せて)ほら、ここの宿に泊まろうとしてたんだ。

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デスクの男

ああ、ならそのゲストハウス電話かけてみようか?

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ゆーが

おお!ありがとう!(なんか意外といい奴やな)

そうして、彼は、ホテルの電話番号に電話をかけてくれた。

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デスクの男

・・・・(コール音)・・・・

・・・うーん。出ないみたいだよ。もう朝なのになあ。おかしいなあ。

ほら、出てみなよ。

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ゆーが

・・・・・・・・ツーツー・・・

確かに。出ないね。

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デスクの男

まあ、やっぱりデモだからやってないのかもね。

ほら、やっぱり今からアグラー行った方が、時間勿体無くないよ。

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ゆーが

そうなのかなあ。

いや、そんな訳ねえだろ!!!気づけ!!その時の俺!!!

単純に朝だから起きてねえんだよ!!!

てか、多分その宿にかけてすらいねえんだよ!!!

デモも嘘に決まってんだろ!!!!

と、3年越しに叫んでみたが、叫んだところで、何も返ってこない。

その後、男はこう提案してきた。

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デスクの男

てか、キミどこまで行きたいの?

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ゆーが

まあ、一応南の方まで行ってみようと思ってるけど。

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デスクの男

ああ、そうなんだ。

そしたら、うち旅行業者だから、旅行計画プラン練って、電車の予約状況とか、見てあげようか?

もし、今取れたら、取っちゃった方が早いかもね。

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ゆーが

ああ、じゃあ頼むわ。

そうして男は、インドの地図を出して、僕の旅行日程を決めて、いつ、どの電車に乗ったら、いい感じで帰れるのか、念密なプランを立てた。

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デスクの男

これでいい?

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ゆーが

おお、なんかいい感じかもしれん。

で、これ全部でいくらなの?

この時点で、「買おう」としていたのか、忘れてしまったが、もうめんどくさいし、怖いし、このおじさんから買ってもいいかなと思ってしまっていた。

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デスクの男

そしたらね・・・・(電卓カタカタ)

これ。20万円くらいだね。全部で。

さすがに、「いやアホか。」と思った。

どう考えても、俺が今20万円持ってる訳ないし、払う余力もない。

もともと、1ヶ月の旅の予算が20万円くらいだ。

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ゆーが

いやいや。さすがに無理だよ。

こんな額払える訳ない。持ってないよ。

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デスクの男

え。でもクレジットカード持ってるでしょ?

クレジットカードで払えるよ?うち?

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ゆーが

いや。本当にそんなに払えない。この金額は無理だよ。

すると、男は、途端に少し不機嫌になった。

「なんだよ。コイツ。払えよ。」みたいな顔を一瞬した。

僕は、その顔に再び恐怖感を覚えた。

ここは事務所の一室で、ここがどこだかも分からない。

しかも、今さっき文字通り痛い目に合ってからまだ数十分しか経過していない。

旅行者なら、全ての人がそうするように、僕もインドに発つ前に、インドの治安や危ない地域などについて、調べていた。

その時に、過去に慶応の学生が、インドで行方不明になって、今もまだ見つかっていない、という記事を見かけた。

もしかしたら、僕もそうなるかもしれない。そういう怖さがあった。

実際よく考えてみたら、今自分は彼らにとって格好の獲物だった。

金を取った後に、僕を葬ることも可能だし、煮るなり焼くなり本当に好きにできる。

そういうのもあってか、僕は、再び怖いなと感じ始めた。

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デスクの男

じゃーわかった。

そしたら、もう南へは行けないね。諦めよう。

北から西にかけてのルートだったら、もっと安いよ。

それでどうだい?

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ゆーが

ああ、うん。

そうして彼は、地図の南インドまでのルートに斜線を引いて、西までのルートで新たに線を引き始め、再び僕の旅行日程と各駅のスケジュールを調整した。

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デスクの男

よし。これで完璧だね。

そしたら、これがね・・・(電卓カタカタ)

だいたいこんなもんかな。

電卓を見ると、10万円と書いてあった。

僕は、それを見て、一瞬「ああ、安いかも。」と思った。

これも後から調べたら、、、と書こうとしたがもういい。

半額になったらなんでもやすく見える。人間なんてそんなもんだ。

10万円。

当時、予算的に20万円くらいは用意していたため、その半分は失うことになる。

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ゆーが

うーん。10万かあ。ちょっとなあ。

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デスクの男

え!!さっきの半分だよ?これだいぶ安いよ。

もし後から取ったら、これより絶対高いの買わなきゃいけなくなるよ?いいの?

旅行代理店やってる私が言うんだから間違いないよ。

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ゆーが

うーん。でもなあ。

僕の記憶では、ここで少し渋った。

10万円か、半分になるな、ただ電車をいちいち取る手間は完全に省ける。

にしても、高いな。

本当にこんなもんなのか。

適正価格なのだろうか。

しかし、断ったら、一体どうなるだろう。

怖い。

とにかく今自分は、何をされるのか分からない状況に置かれているのだ。

半分で手を打つべきか。

そうだ。

手を打ってしまおう。

残り10万円くらいあれば、残り乗り切れるだろう。

とにかくこの状況から逃げたい。早くここから逃げたい。

本当に色々なことを、一瞬で考えた気がする。

そして、悩んだ末に、僕が出した結論は、「イエス」だった。

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ゆーが

うーん。

これ買ったら、すぐタージマハルのところまで行けるんだよね?

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デスクの男

もちろんだよ。

タージのあるアグラーの前に、ジャイプールにも寄る。

その間、全部タクシーをつけてあげるよ。

この料金で、ここまでつける会社は他にないよ?

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ゆーが

わかった。買うよ。

こうして、僕は、そのチケットを合計10万円くらいで購入した。

デスクの男は、ものすごく上機嫌で優しくなった。

これは、いいチケットだ。君は本当にラッキーな旅人だよ。と言いながら。

購入してすぐは、率直に言って嬉しかった。

この環境からようやく解放されるという嬉しさと、ようやく旅が始まるという期待感に溢れていた。

ただ、その数時間後に、落ち着いて考えた時から今に至るまで、僕はその決断を激しく後悔している。

あの時買わなければ、あの時タクシーに乗らないで、地下鉄を本気で探していれば。

何度後悔したか分からない。

 

チケットの購入を済ませると、チャイを飲みながら、これからの話について聞かれた。

これが、自分の人生初のチャイだったが、甘くて本当に美味しかった。

今思うと、すごく苦い思い出に感じるが。

話が終わると、これからすぐにジャイプールに行くから、車に乗っていってくれ。という旨を伝えられた。

僕は外に出て、デスクの男から新たな運転手を紹介された。

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デスクの男

今日から3日間くらい、君と旅を共にすることになる〇〇だ。

いいドライバーだし、色々なところを知っているから、たくさん案内してもらうといい。

タクシーの横には、1人の恰幅の良い、新しい運転手らしき男が立っていた。

おそらく体重は、ゆうに100kg以上はあるだろうという巨漢の男だった。

僕は解放されてはいなかった。

ここから3日間は、彼らに拘束されることになる。

③に続く。

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